取材レポート

奈良学園小学校

ロイロノートや Zoom を活用し、休校中でも「学びを止めない」奈良学園小学校の取り組み

新型コロナウィルス感染防止のための臨時休校措置の中でも、奈良学園小学校では子ども達の学びを止めないために、ロイロノートや Zoom を導入し、学びを提供してきました。この休校期間中の取り組みについて梅田真寿美校長先生と日比忍教頭先生にお話をお伺いしました。

奈良学園小学校 校長 梅田真寿美先生、教頭 日比忍先生 のお話
梅田真寿美 校長先生

梅田真寿美 校長先生

奈良学園小学校 校長 梅田真寿美先生、教頭 日比忍先生 のお話

ロイロノートで実現する学校環境の配信

“学びを止めない”をキャッチフレーズに、休校期間中も ICT を活用し、学びの提供を行っている奈良学園小学校。学校の学びを家庭に届けるために導入されたのが、学習支援ソフト・ロイロノートです。教員は、動画や静止画で学習内容を説明して課題を伝え、それを見た子どもたちは家庭で課題に取り組み、ロイロノートで提出します。提出された課題は教員がチェックしてすぐに返却できるという利便さがあるのがロイロノートです。

ロイロノートで配信したのは、国・算・理・社の 4 教科はもちろんのこと、道徳や音楽、図工、ネイティブ教員による英語まで、ほぼ全ての教科の授業動画。学習面だけでなく生活面での指導も必要だという判断のもと、養護教諭によるマスクの掛け方や三密を説明する動画や体力づくりを促すものまで。
どの動画も、普通に授業を撮影するだけでなく、教員同士が掛け合いをしたり、人形劇風にアレンジしたりと子ども達が楽しみながら学べる工夫が凝らされています。

1 年生は、まだ校舎内で学習したことがないため、授業動画以外にも「学校のチャイムを聞かせて、学校ではこういうチャイムに合わせて動きますよ。教室に入ったら、こういう風にして座るんですよ」といったことから動画を作って配信。学校には来られませんが、学校での生活を感じることのできるようにという思いを込めて、教員が動画を作成しています。

これらの動画を家庭で見ながら、子ども達は学習予定表に沿って課題を進めていきます。この学習予定表を作成する際にも、教員間で時間をかけて議論したそうです。
「時間割を作って届けようかとも話したのですが、それぞれのご家庭の状況により、時間割通りに動くことは難しい場合も出てくる。そう考え、その日にしてほしいことは何かを、出来るだけシンプルに、子どもが見ても分かりやすいものにして届けることにしました」と梅田校長先生。その言葉通り、出来上がった学習予定表は、「毎日すること」とその日の課題が見やすく表にまとめられており、低学年でも自分で学びを進められる作りとなっています。

課題の配信・提出もロイロノートを通して行われます。提出された課題は、その日の内に、教員が電子上で丸付けやコメントを入れて返却。動画の提出課題には、教員も動画でコメントを入れて戻したりもするそうです。ほぼ全員が、予定通りに課題を提出している状況に、家庭での学習がスムーズに進んでいることがうかがえます。
そして、課題の即日チェックができることで、提出しなかった子どもに対してもすぐにアプローチが可能。休校中であっても、個々の学習の状況を教員がしっかり把握することができています。

Zoom での朝の会を通して感じる安心感

順調に学校の学びを配信していく中で、5 月になっても学校再開は難しいという状況が見えてきたと同時に、電話やロイロノートでのやりとりから、子ども達や保護者に不安感が溜まってきていると梅田校長先生は感じられたそうです。そこで、新たな取り組みとして始まったのが Zoom によるリアルタイムで双方向にコミュニケーションを行う朝の会です。

この朝の会で目指したのは「子ども達に“つながりあっている”という意識をしっかり持ってもらい、安心してもらうこと」。最初は自己紹介からスタートし、しりとりをして遊んだり、自分の好きなおもちゃを紹介したりする場面もありました。自分の好きなぬいぐるみを持ってきて見せる子、レゴが好きだと言ってできあがった宇宙ステーションを見せる子などなど。家にいるからこそ紹介できるものをお互いに見ながら、家でがんばっているのは自分だけではないんだ、ということを感じ取ることができる時間になったようです。

クラスメイトの声を聞けることや家での雰囲気が伝わってくることで、子ども達は「クラスの一員だ」という所属感と、「お友達も家で頑張っている」という安心感を得られたようです。「久しぶりにみんなに会えた気がしてうれしかった」「勉強をしようというやる気が出た」といった子ども達の声がたくさん寄せられたとのこと。梅田校長先生も「予想以上に子どもたちの不安は大きかったのですが、Zoom でコミュニケーションがとれたことの効果も非常に大きい」と実感されたそうです。

教員も朝の会での子どもの様子に何かおかしいなと感じることがあれば、すぐに電話をしたり、朝の会に出られなかった子どもには、別の時間帯に Zoom で顔を合わせる時間を作ったりするなど、休校中であっても連絡を密にし、しっかりと子ども達の心に寄り添おうとしている様子が、先生のお話から伝わってきました。

保護者の納得を得られる体制作り

ロイロノートや Zoom を取り入れる際、最も大切にしたのが保護者に活用の意図を理解してもらうことです。
「スタートする時に、ロイロノートや Zoom とはどんなソフトで、どういう意図をもって何を配信するのか、保護者にもわかりやすく整理し、お伝えしました。この活用意図を学校と家庭が共有できていることで、子どもへの言葉かけが、どちらにおいてもやりやすくなります」と梅田校長先生は言われます。

子どもの学習を進めていきながら、並行して保護者とのロイロノート上でのやりとりも盛んに行われています。何か心配があればカードに書いてくださいと連絡して、寄せられた意見にはロイロノート上や電話を使ってすぐに対応します。今回の取り組みに肯定的な意見が多いのも、学校側の丁寧な説明やきめ細やかな対応により、保護者が納得して協力していることの表れではないかと思います。

また、この休校中も学校での預かり保育を実施。お弁当持ちで 8 時 30 分~13 時 30 分は学校で、それ以降も預かり を希望する場合は、校内にある「ならとみアフタースクール」にて 18 時まで預かってもらうことが可能です。 学校では、三密に配慮された環境でロイロノートを使って学びを進めることができます。学校へ送迎可能な方限定とはなりますが、いつもと変わらない学習ができる場が提供されたことに、働いておられる保護者からの感謝の言葉をたくさんいただいたそうです。

再開後は、個々の状況を丁寧に把握することを第一に

各クラスが仕切られることなく、多目的な活動に使用されるオープンスペースが教室の前に位置付く奈良学園小学校。その恵まれた学習環境は、三密を避けるという点でも有効です。手洗い励行など、防疫面での対策は「当たり前に行っていく」ほか、子ども達の心の状態や学習面での理解状況の把握に力を注ぐ予定です。

まず、子ども達のストレス状況を最初にアンケートでしっかりとチェック。スクールカウンセラーや臨床心理士が来校する回数も 6 月の初めは多くして、子ども達の学校生活の様子を観察し、教員目線だけでは捉えきれない心身の状況をしっかりとらえていきたいと考えているそうです。

学習面では、休校中に進めた学習内容の理解状況を確認し、定着の難しさをもつ子どもたちに対してきめ細かなフォローをしていく予定です。「一つひとつの内容を丁寧に確認し、しっかりと今後の学習に向かえるようにします」と梅田校長先生はお話くださいました。

まとめ

「学校にいない子ども達に、どうにかして学習内容を届けようと、力を合わせて様々な工夫を行い続ける教員の力の大きさを感じました」という梅田校長先生。今回の ICT を活用した学習の配信は、すべて一から作り出されたものです。この取り組みにより、在宅学習を進める子ども達は、止まることなく学び続けることができました。実現できたのは、教員のシステムや動画を作る努力はもちろんのことですが、それだけでなく、丁寧に説明することで保護者とつながり、家庭で安心して取り組める環境を作り上げたことも大きいと感じました。

「将来、子ども達がこのコロナによる休校のことを振り返った時に、大変だったけどしっかり乗り越えることができてよかった、と思えるようにしていかなければならない、と考えています」と梅田校長先生は続けられました。その思いは、子ども達の学びにとって何が大切かを真摯に考え、それを追求する教員達のもとで、きっと叶えられるだろうと感じることができた取材でした。

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